この記事ではサカザキ菌やサルモネラ菌の症状等も紹介していますが、全ての場合に当てはまるものではありません。少しでもお子さんの様子がおかしいと思ったら、決して自己判断せず専門家医の診察を受けてください。

- サカザキ菌やサルモネラ菌が危ないって聞くけど、どんな菌なんだろう?
- 粉ミルクを作るのは熱湯と言うけれど、70℃で十分なの?
- ウォーターサーバーを使っているけど、大丈夫?
粉ミルクは赤ちゃんの命を育む大切なものですが、安全に使うためにはどうしたら良いのか、わからないことだらけで不安ですよね。
ですが大丈夫です!正しい知識で正しい対策をすれば、リスクを極めて低くすることができます。
私は製薬会社の品質管理部門で、製品の微生物リスクの管理と、その対策の論理的な検証を専門としてきました。
本記事では、その経験で培った「微生物管理の知識」と「科学的根拠に基づく分析力」を用い、サカザキ菌とサルモネラ菌の正体から初期症状、そして最も重要な「家庭で実践できる調乳時の具体的な対策」までを徹底的に解説します。
根拠に基づいたリスク管理の方法を学ぶことで、不安を最小化し、自信を持って赤ちゃんにミルクをあげられる準備を始めましょう。
- サカザキ菌やサルモネラ菌の具体的な危険性と、乳児が感染した場合の症状
- 粉ミルクの調乳時に、なぜ特定の対策が必要なのかという科学的な根拠
- ミルク作りでリスクを最小化するための具体的行動
※本記事の画像は特記している場合を除きすべてNano BananaもしくはCanva AIによるAI生成で作成されています。特定の個人・団体・場所を指定して生成したものは含まれておりません。
サカザキ菌やサルモネラ菌とは?なぜ乳幼児の粉ミルクで問題になるのか
サカザキ菌はしぶとく生き残る菌

サカザキ菌は自然界に広く存在する菌で、乾燥野菜、動物やヒトの腸、環境中(土、空気など)から検出されたという報告があります。
サカザキ菌は乾燥状態の調製粉乳の中で1年以上生存することが示されています。もし粉ミルクの中に混入してしまった場合、正しく殺菌できないと赤ちゃんが感染の危険に晒されます。
アメリカのデータですが、アメリカではサカザキ菌の感染率は健常な乳児10万人に1人とされています。なお、極低出生体重児の場合は10万人あたり9.4人に増加しますので、免疫に不安のある赤ちゃんがいるご家庭では特に衛生管理に注意することが重要です。
- 乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン, WHO/FAO, 厚労省仮訳(以下WHO/FAOガイドライン)
サカザキ菌への感染リスクが特に高いのは「低体重児・新生児」
新生児や乳児(特に2ヶ月未満)がサカザキ菌に感染すると菌血症、細菌性髄膜炎、壊死性腸炎等の病気を発症するリスクが高いと言われています。
これらに限らずサカザキ菌が原因の病気は、赤ちゃんの体の中に菌が侵入することで発症するもので、乳児が発症した際の死亡率は20-50%と言われています。
国内の症例報告は2例と少ないものの、特に免疫機能が未熟な乳幼児に対する潜在的なリスクを考慮し、WHO/FAOは調乳時の対策を推奨しています。ガイドラインの記載を守っていれば健常な赤ちゃんの感染リスクは極めて低くなるため、親として正しいミルクの作り方を理解することが重要です。
サルモネラ菌(Salmonella属)は大人も罹る食中毒菌
サルモネラ菌は食中毒菌として有名な菌の一つで、大人でも食中毒になる菌です。
多くのケースでは加熱不足の卵、肉、魚料理等が原因になりやすいとされています。そのため赤ちゃんのミルク作りを行う直前に料理を行っていた際等は特に注意が必要です。
赤ちゃんは重篤な症状になりやすいため、大人以上に注意が必要となります。
- サルモネラ菌(農林水産省)
- 2017年12月27日更新 乳児用ミルクによるサルモネラ感染症- フランス(厚労省)
サカザキ菌やサルモネラ菌は粉ミルクに潜んでいる可能性あり
後述しますが、海外でも国内でも粉ミルクは微生物に関する成分規格が存在しています。それでも、サカザキ菌やサルモネラ菌が粉ミルクから検出された事例があるのです。
2006年11月~2008年2月の期間で国内で流通している粉ミルク149製品(国産:61、海外:88)のうち、国産の4製品、海外の5製品でサカザキ菌が見つかっています。(6~7%)
サルモネラ菌
国内での汚染事例は見つかりませんでした。一方で、WHOガイドラインによると過去に欧米や韓国で感染事例が報告されています。
直近では、厚労省の発表によると、メーカーが原因と考えられる乳児の集団感染が2017年にフランスで報告されています。
このように、先進国であっても他人事ではありません。正しい対策を講じることで、赤ちゃんの健康を守る必要があります。
サカザキ菌の感染リスクと発症した場合の重篤性(公的機関の情報の引用)
農水省の資料によると、サカザキ菌による病気の発症に必要な菌数は10~100個程度と少ない数です。そのため僅かでも残っていたらすぐにミルクの中で増殖して赤ちゃんに感染し得ます。
乳幼児の場合、潜伏期間は数日間と言われています。なお、成人の場合は感染事例が稀のため不明です。
農水省の資料やMSDマニュアルによれば、乳幼児の主な症状として発熱、食欲不振、発作等を起こすとされています。菌が血液に乗って脳や脊髄に侵入して髄膜炎を起こすこともあり、そういった場合はあやしても逆にそれが刺激になり大泣きする、等の症状が見られる場合があるとのことです。
なお、一番危険なのは素人の自己判断です。少しでもおかしいな、と思ったり、心当たりがある場合はすぐに病院へ行って専門家医の先生に診てもらってください。
サルモネラ菌の感染リスクと発症した場合の重篤性(公的機関の情報の引用)
農水省の資料によると、サルモネラ菌の発症に必要な菌数は菌株や菌種によって異なり、一般には100万個~1000万個と言われているが、一部の菌種では10個~100個でも発症することがあるとされています。
潜伏期間は6時間~48時間で、平均は15時間です。これは成人の場合であるため、乳児や小児の場合は異なる可能性があります。
農水省の資料やMSDマニュアルによれば、主な症状は悪心、嘔吐、腹痛、下痢、発熱とされており、乳幼児は重篤になり死亡する可能性もあるとのことです。また、サカザキ菌と同様に乳児では菌血症のおそれもあるとのことでした。
繰り返しになりますが、一番危険なのは素人の自己判断です。赤ちゃんの様子がおかしいと感じたらすぐに病院へ行って専門家医の先生に診てもらってください。
【実践編】菌のリスクを最小化する具体的な調乳手順
製品による予防:国内規格を満たした粉ミルクを使う
(23) 調製粉乳
成分規格
乳固形分 五〇・〇%以上
水分 五・〇%以下
細菌数(標準平板培養法で一g当たり) 五〇、〇〇〇以下
大腸菌群 陰性
上記のように国内の粉ミルクの成分規格には細菌と大腸菌群に関する規格があります。
つまり、国内製のものに関しては、「調製粉乳」として認可されている製品、もしくは「特定用途食品(乳児用調製粉乳)」として認可されている製品は、日本の安全基準を満たしているため安心して使うことができます。
なお、検査に用いるのは製品の一部であるため、「大腸菌群陰性」であっても完全に「大腸菌群がゼロ」であることを証明はできないことをご理解ください。その他の細菌についても50000個まで許容されるため、ある程度の菌数は存在する可能性があります。
以下は微生物試験がどのように行われているかのイメージ図です。
- 作られた製品のうち、一部を抜き取ります。
- その製品の一部をサンプルとして試験に使います。
- 試験結果から、細菌数の推定や、大腸菌群数の陽性/陰性を判断します。

つまり、試験結果が必ずしも製品全体を評価できているとは言えない、ということです。
絶対に菌を入れたくないという方向け:液体ミルク
絶対に菌が入っていてほしくない、という方に向けては、上記のような商品があります。
粉ミルクと同様に国の成分規格もあり、発育しうる微生物が陰性であることが求められているため粉ミルクよりも厳しい基準です。
(24) 調製液状乳
1 成分規格
発育し得る微生物 陰性
2 製造の方法の基準
牛乳のうち、摂氏一〇度以下で保存することを要しないものの例によること。
3 保存の方法の基準
常温を超えない温度で保存すること。
つまり、未開封状態での無菌性を求めていることを示します。(液体ミルクは容器に入れた後の製品を高温で殺菌しているためクリアできる)
厳しい衛生管理をしている分、高額な商品です。しかし、お出かけ用、災害時用、としても使えるため幾つかは買っておいても良いと思います。調乳の手間がないため省力化にも繋がりますね。
なお、粉ミルクと同様、一度開けたらすぐ使う、使い切りです。一度開封してしまうと、栄養たっぷりなため、空気中の菌が入ってすぐ増えてしまいます。
【科学的根拠】粉ミルクのサカザキ菌・サルモネラ菌を70℃で殺菌できる時間(D値)を徹底解説
サカザキ菌やサルモネラ菌の数が1/10に減る時間(D値)を温度別に分析している論文によると、どちらも70℃であれば2分以内、特にサルモネラ菌は70℃以上なら数秒で効果的に殺菌できるというデータがありました。
論文中のデータを一部引用すると、以下のような表になります。
| 製品種別 | 温度 | サカザキ菌が1/10の数になるまでの時間 |
|---|---|---|
| 低脂肪乳粉末 | 60℃ | 3.14分 |
| 70℃ | 1.25分 | |
| 脱脂粉乳粉末 | 60℃ | 3.09分 |
| 70℃ | 1.25分 | |
| 全乳粉 | 60℃ | 4.36分 |
| 70℃ | 1.77分 |
※より加熱しにくい肉の中でも、70℃のお湯で効果的に殺菌できることを示すデータ
| 部位 | 温度 | サルモネラ菌が1/10の数になるまでの時間 |
|---|---|---|
| 鶏もも肉/鶏足肉 | 60℃ | 5.72分 |
| 70℃ | 0.07分 | |
| 皮 | 60℃ | 7.31分 |
| 70℃ | 0.09分 |
Thermal Inactivation of Salmonella and Listeria Monocytogenes in Ground Chicken Thigh/Leg Meat and Skin, R.Y. Murphy et al.
つまり、ガイドラインが提唱する70℃以上のお湯であれば、ミルクを70℃から人肌まで冷ましているうちに自然と殺菌されていることを示します。
ただし、お湯を調乳器具に注ぐと温度が下がってしまうため、ギリギリの70℃ではなく、沸騰させたお湯を少し冷ました程度の余裕を持った温度(70℃以上)を使うことが重要です。
また、60℃では菌数を1/10に減少させるために必要な時間は倍以上長くなっています。ここから更に温くなれば、逆に菌の増殖を促進するような温度帯になるため、温度低下には注意が必要です。
70℃以上という安全基準を迅速かつ常時満たし、調乳の手間を劇的に減らす具体的なツール(ウォーターサーバー)についてはこちらの記事で紹介しています。
道具の衛生管理:哺乳瓶・調乳器具の洗浄と保管ルール
WHO/FAOガイドラインでは、洗浄と滅菌を推奨しています。
- いずれの作業においても、作業前に手を石鹸と清浄な水で洗う
- 哺乳および調乳器具(コップ、哺乳瓶、乳首及びスプーン)は熱い石鹸水で十分に洗う
- 哺乳瓶は清潔な瓶用ブラシや乳首用ブラシを使用して瓶の内外および乳首をこすり、残った粉ミルクをすべて確実に取り除く
- 洗浄後は市販の滅菌器を使うか、煮沸消毒する
- 煮沸消毒の方法
- 大型の容器(鍋など)に水を満たし、洗浄した哺乳および調乳器具を完全に浸す(気泡がないことを確認する)
- 容器(鍋)に蓋をして沸騰させる
- 哺乳瓶および調乳器具が必要になるまで容器(鍋)に蓋をしておく
- 煮沸消毒の方法
- 滅菌済みの器具を取り扱う際は、滅菌済みのピンセットやトングを用いることが望ましい
滅菌や煮沸消毒後、哺乳および調乳器具は使用直前に取り出すのがベストです。
特に煮沸消毒の場合、重要なのは「沸騰させた後に菌が入るような状態にしないこと」。容器(鍋)の蓋を開けると空気中の菌が入る可能性が高くなるため、蓋は開けないようにするとよいでしょう。
滅菌器の場合も同様で、すぐに使わない場合は空気中の菌が入らないよう、カバーをかけて清潔な場所に保管したり、滅菌器の中に入れておくと良いです。
哺乳瓶は密閉性が高いため、完全に組み立てて保管することも有効となります。
調乳後のミルクの取り扱いルール:作り置きの危険性
調乳後のミルクはすぐに使い切ることが大原則です。
WHOのガイドラインでも、調乳後2時間以上室温で放置しないよう推奨しています。これはサカザキ菌やサルモネラ菌以外にも、家庭環境中から有害な菌が混入した場合にミルク内で急速に増殖するリスクがあるためです。
特に赤ちゃんが一度咥えた哺乳瓶をそのまま保管すると、口の部分で菌が増殖する可能性があります。もったいないですが、必ず使い切りにしましょう。
【科学的根拠により不安を安心へ】サカザキ菌やサルモネラ菌の対策は「ゼロ」ではなく「最小化」
今までご紹介したとおり、サカザキ菌やサルモネラ菌を”ゼロ”にするのは科学的に不可能です。
それでも”限りなくゼロに近づける”ことはできます。赤ちゃんが健康に育つために、絶対に気をつけたい点を改めて以下にまとめました。
正しい知識を持ち、それに従って行動することであなたの不安は安心に変えられます。
ミルクへの菌汚染防止手順や殺菌の理屈を理解し、赤ちゃんに安心してあげられるミルクを作れるようになりましょう!
安全と時短を両立する最適なツール:ウォーターサーバー
WHOガイドライン推奨の70℃以上での調乳を常時・確実に実現できるウォーターサーバーは安全と時短を両立する最適なツールです。
私は品質管理の視点で安心してミルク作りに使えるメーカーを探すため、以下の基準で検討しました。
上記3つの基準を満たし、『安全と時短を両立できる』と判断した具体的なメーカーについてはこちらの記事で紹介しています。ぜひ次のステップとしてご覧ください。



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